HTLV-1質問箱

HTLV-1ってどんなウイルス?


HTLV-1はヒトに感染するレトロウイルスの一種で、成人T細胞性白血病(Adult T-cell leukemia / lymphoma)等の病気の原因となる病原性のあるウイルスです。

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同じレトロウイルスの仲間としては、エイズの原因となるHIVが有名です。
しかしHTLV-1とHIVはある面ではよく似た性質を持ちますが、全く別のウイルスです。
HTLV-1はレトロウイルス科オンコウイルス亜科、HIVは同科レンチウイルス亜科に属します。

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レトロウイルス、プロウイルスとは?


レトロウイルスとは、RNAウイルス(ウイスル粒子の殻の中に、遺伝子の本体としてDNAではなくRNAを持つウイルス)の一種です。

しかし他のRNAウイルスと違ってレトロウイルスに特徴的なことは、感染の標的となる宿主細胞(HTLV-1やHIVではヒトTリンパ球)に感染後、そのウイルスRNAは細胞内でDNAに変換され(この過程を「逆転写=reverse transcription」と言います)、宿主細胞の染色体(ゲノム)DNAの中に組み込まれるということです。

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このようにDNAに変換されて宿主染色体に組み込まれたウイルスの遺伝子を「プロウイルス」と呼びます。
一度宿主染色体に組み込まれたウイルスDNAはその後、二度と染色体から抜け落ちることはありません。

宿主染色体上のウイルスDNAから、宿主の遺伝子と同じようにRNAが作られて、それが子孫のウイルスの遺伝子となったり、ウイルスの殻などを作る蛋白質合成のもととなったりします。

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感染細胞率(ウイルスロード)とは?


ヒトのTリンパ球にHTLV-1ウイルスが感染すると、1細胞あたり1個のプロウイルスが組み込まれます。つまりプロウイルスの数=感染細胞数となります。
したがって、感染者の方の血液中の全リンパ球数とプロウイルス数を調べると、全リンパ球中のHTLV-1感染細胞の含有率が求められます。

無症状のHTLV-1感染者(キャリア)の末梢血中では、全リンパ球のうち約1~3 %位が感染細胞である(つまりリンパ球100個分を調べると1~3分子のプロウイルスDNAが検出できる)事が知られています。

この感染細胞の割合(感染細胞率あるいは「ウイルスロード」)については、各HTLV-1関連疾患とのおおまかな相関が解ってきています。

たとえば普通の何の症状も無いキャリアの場合では上記のように1~3 %ですが、HTLV-1キャリアの一部に発症するぶどう膜炎 (HTLV-1 uveitis、HU) を持つ患者の方では5 %前後、慢性の神経麻痺を症状とするHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated Myelopathy, HAM)の患者の方で10 %以上の例が多い事が示されています。

高齢者に多い糞線虫(経皮感染をする寄生虫)との重感染者では感染細胞の割合が増えており、40 %以上と言う例もあります。

しかし感染細胞率には個人差もあり、感染率がキャリアの範囲を超えていても、健康に過ごされている感染者の方もある程度存在します。

どんな病気になる?


HTLV-1に感染するとその中の一部の人が成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU)などの病気になります。

感染者は全員病気になる?


いいえ。

ほとんどの感染者の方にはなんの症状の現れず、一生涯HTLV-1関連疾患とは無縁で感染していない人達と同じように健康に生活することができます。

病気になる確率はどのくらい?


成人T細胞性白血病(ATL)の生涯発症率は感染者全体の2.5~5 %程度と言われています。

HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)やHTLV-1ぶどう膜炎(HU)はもっと少なく、ATLの数分の一程度の発症率だと考えられています。

病気の予防法はある?


残念ながら今のところ発病を予防する手立てはありません。

ただ、上記のように病気の発症率は決して高くはありません。
感染していない方々と同じように健康に留意して、あまり気にせずお過ごしください。

通常の健康診断の一環としてHTLV-1に詳しい医師のもとへ定期的に受診することは、万が一なんらかのHTLV-1関連疾患を発症した場合に、迅速な診断および治療を受けられる可能性があります。

一度感染したらずっと感染したまま?


はい。

HTLV-1の感染は、ウイルスの遺伝子がヒトの細胞の中の染色体(遺伝子の集合体)の中に組み込まれることによって起こります。
そして一度組み込まれてしまったウイルスの遺伝子は、抜け落ちることなくずっとその細胞の中に受け継がれていきます。

したがって、一生涯感染したままとなります。

いつ感染したかを知ることはできる?


急性期の症状(感染直後の明らかな症状)がありませんので、いつ感染したのかを知るのは困難です。

後になり、血液検査(抗体検査)で感染を知ることになります。

ATLってどんな病気?


HTLV-1感染者におこるHTLV-1が感染したTリンパ球による白血病・リンパ腫のことを言います。

HTLV-1感染者の多い、九州・沖縄地方に多い病気です。
全身のリンパ節が腫れたり、皮膚が赤くなったり、肝臓がはれたりします。男性がやや多く、30歳を過ぎて発症し、平均発症年齢は60歳です。家族内に同じ病気の人がいることもあります。

ATLかどうかは、血液の中にATL細胞(はなびら細胞ーはなびらのように見える細胞ー)があって、更に増殖HTLV-1感染細胞のクローナリティ(単一性:1種類の感染細胞による増殖)の検査が陽性であるかどうかで最終的に判断します。

またATLは急性型、慢性型、くすぶり型、リンパ腫型、急性転化型に分類され、経過は急激なものからゆっくり進行するものまでさまざまです。


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どんな治療をするの?(ATL)


急性型やリンパ腫型・急性転化型では化学療法や骨髄移植(造血幹細胞移植)による治療を行います。

慢性型やくすぶり型では定期的に通院していただき経過を観察することになります。

治療の流れは?(ATL)


急性型やリンパ腫型・急性転化型では入院後、種々の検査により診断を確定してから治療が始まります。
化学療法を行うか骨髄移植で治療するかの判断もこの時行われます。

化学療法の場合は、くりかえし化学療法を行い、完全寛解(ATL細胞が確認されなくなる)を目指します。
入院を含めて4~6ヶ月はかかります。そのあとも長期間、抗がん剤を続けることになります。

骨髄移植を行った場合は、免疫抑制剤を継続的に使用します。

化学療法とは?


いくつかの抗がん剤を組み合わせて治療を行なうことです。

一般の白血病・リンパ腫の治療に用いられる4~6種類の抗がん剤を組み合わせて周期的に投与します。
投与の方法は抗がん剤の種類により経口投与(飲み薬)から点滴による投与までさまざまです。

初期治療では少なくとも3ヶ月くらいの入院が必要になります。

骨髄移植とは?


大量の放射線照射と抗がん剤を使用して、患者の方の骨髄細胞をほとんど空にしてから、組織適合検査済みのドナー(提供者)の骨髄細胞を移植します。

患者の方の肉体的負担が大きいため、比較的若い方(40歳代まで)が対象になります。
高齢者が多いATLでは、適用出来る患者の方の割合が少ないのが実情です。

医療費はどのくらいかかる?(ATL)


他の白血病、リンパ腫の場合と変わりません。もちろん健康保険が適用されます。

治療費用については、健康保険による高額医療費補助があるため、健康保険適用部分に関しては標準的収入世帯では月額約8万円ほどの自己負担が上限になることがほとんどです。

HAMってどんな病気?


HAMはHTLV-1関連脊髄症の略称です。

HTLV-1感染者におこる、徐々に進行する両下肢の筋肉が固く緊張した感じの不完全な麻痺が症状の中心となる病気です。

頻尿や頑固な便秘、軽度の感覚障害、発汗障害を伴い、慢性に経過します。主症状の歩行障害は軽度の引きずり歩行から、足の突っ張りが強くなると内反尖足(つま先が内側に反り返る様なかたち)となり、進行すると下肢筋力の低下とともに車椅子になる場合があります。

排尿障害は夜間の尿回数が増え、日中も2時間以内の頻尿、尿を出しても残った感じのある残尿感、尿漏れ(尿失禁)などがおこります。

診断は特徴的な症状と経過に加え、血清及び髄液の抗HTLV-1抗体が陽性であること、他の原因を除外することにより総合的になされます。

どんな治療をするの?(HAM)


HAMの活動性(病気の進行強度)検査のため、髄液検査で抗HTLV-1抗体、髄液IgG(髄膜炎、脳炎などで増える物質)、ネオプテリン(感染症や自己免疫疾患などで体内で増える物質)の測定および末梢血HTLV-1ウイルス量測定をします。

通常、脊椎MRIは正常なので頭部を含めたMRIの検査を受け、また合併症の検査で眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科を受診します。

病気が急性進行期と判断された場合はステロイドパルス療法やαインターフェロン療法を行います。

治療としてステロイドパルス療法を実施した場合は、メチルプレドニン点滴 1g/日投与を3日間行うと同時に、ステロイド内服1mg/体重Kg投与を行います。その後ステロイド内服を減量して5-10mg/日の維持量にします。
この治療の行程は入院で約1ヶ月かかります。

またαインターフェロンを用いた療法では、αインターフェロンを毎日30日間筋肉注射すると同時にステロイドの内服を併用します。
退院後、αインターフェロンを週2~3回に減量して最低4ヶ月通院により投与します。

HAMは慢性に経過するため、治療は生涯続きます。

最初の治療後、改善がみられなかった患者の方では、リハビリテーションか筋弛緩剤のみの治療法を選択することもできます。
中には便秘を改善する為の下剤だけを使用している方もいます。

治療の流れは?(HAM)


HAMの疑いがあれば、まず神経内科を受診し診断を確定することが必要です。

その上でHAM単独かHAMに伴う合併症(涙や唾液が出にくい、皮膚乾燥、手足のしびれなどを認めるシェーグレン症候群、肺障害、関節症、ぶどう膜炎、成人T細胞白血病ATLなど)があるかどうかの精密検査を受けます。

また末梢血のHTLV-1プロウイルス量、髄液の抗HTLV-1抗体価やネオプテリンの測定を受け、病状の現在の活動性を判定します。

HAMによる排尿障害は神経が原因によるものですが、その結果として膀胱がゆるんでいるのか、膀胱が突っ張っているのか、膀胱の緊張が協調不全を起こしているのかを泌尿器科で検査してもらい、それぞれの原因に適した薬を使用します。

これらを総合的に判断し、治療方針を決定します。

治療にはステロイドホルモンやαインターフェロンが有効です。
しかし、病気の活動性が低くあまり進行がみられない場合には、ビタミンC大量療法やサラゾピリン・エリスロマイシン少量療法など、よりマイルドな免疫調整作用を期待した治療がよいこともあります。

また、下肢の筋力低下や関節が痙性で拘縮しないようにリハビリテーションも大切です。

HAMは難治性で、治療後でも約5割の方で症状が再燃進行しますので、そのつど福祉制度や福祉器具を利用し、日常生活動作を維持向上させていく必要があります。

インターフェロンとは?


インターフェロンという言葉は、interfere(妨害する、相互干渉する)という英語から作られました。

ウイルスが侵入している細胞に、別のウイルスが侵入すると、お互いのウイルスの増殖を抑える物質が作られる現象がみられ、この物質がインターフェロンと名づけられました。

インターフェロンの作用にはウイルスの増殖を抑える作用、細胞の増殖を抑える作用、免疫を調節する作用があります。
ウイルス増殖抑制作用でC型ウイルス肝炎の治療に用いられ、細胞増殖を抑える作用から白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、菌状臭肉腫などの癌治療に使われています。

インターフェロンにはいくつか種類があり、HAMやC型慢性肝炎に対してはαインターフェロンを、多発性硬化症にはβインターフェロン、ATLにはγインターフェロンが用いられています。

副作用として発熱、脱毛、白血球減少、抑うつなどがあります。

ステロイドとは?


人間の副腎から合成分泌される重要なホルモンです。

通常は人で一日に20mgほど体内で産生されます。ストレス排除や抗炎症作用、電解質の維持作用、血圧維持など大切な作用をもっています。

HAMでは初期治療や維持療法に用いられています。膠原病などで用いられるような長期大量の投与は通常HAMでは必要ありません。

副作用として骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、肥満、にきびなどが見られ、それぞれの対策をきちんととる必要があります。

AZTとは?


AZTはアジドチミジンというエイズの治療薬です。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)やHTLV-1はRNAウイルスで、リンパ球に感染後ウイルスRNA遺伝子をDNAに変換し、私たちの遺伝子の中に組み込みます。
AZTはRNAをDNAに変換する逆転写酵素を阻害し、ウイルス感染細胞の増加を抑制する薬です。

HIVのウイルス量を減少させるほか、HAM患者ではHTLV-1のウイルス量を減らすという報告もありますが、まだHAMに対する効果は十分に確かめられてはいません。

副作用として肝機能障害があります。

医療費はどのくらいかかる?(HAM)


ステロイドパルス療法を含めた入院加療費は1ヶ月約35万円で、αインターフェロンを用いた場合は約20万円です。
但し健康保険による高額医療費補助があるため、健康保険適用部分に関しては標準的収入世帯では月額約8万円ほどの自己負担が上限になることがほとんどです。

通院による加療の場合、患者の方へのアンケート結果では1ヶ月あたりの通院費5000~30000円未満の方が約50%でした。
週2回インターフェロンを使用している方では月平均4万円です。また医療費が5万円以上かかっている方も約2%おられました。

HUってどんな病気?


HTLV-1キャリア(感染者)に発病するぶどう膜炎(眼内の炎症)です。

眼の前に蚊が飛んでいるような症状(飛蚊症)や霧がかかった感じ(霧視)、視力低下などの症状が、急に片眼あるいは両眼に生じてきます。
強い場合は視力が0.1以下に低下することもあります。

どんな治療をするの?(HU)


副腎皮質ステロイド薬がよく効きます。点眼あるいは内服で治療します。
多くの患者の方では、HUは1~2ヶ月のステロイド治療で治癒し視力も正常に回復します。

約半数の患者の方でHUが再発しますが、その時は最初と同じ治療をします。
再発する頻度は1年に数回~数年に1回程度まで患者の方により大きな差があります。

治療の流れは?(HU)


飛蚊症、霧視、視力低下などの眼の症状を生じた場合は、病院の眼科を受診してください。

ぶどう膜炎と診断されたら、ぶどう膜炎の原因を調べる検査があります。
その結果、血清HTLV-1抗体が陽性で、ぶどう膜炎を起こす他の原因や病気がなければ、HUと診断されます。

HUと診断されれば、HAMやATLを合併していないかを内科で検査してもらいます。

HUだけであれば、眼科でステロイドの点眼や内服で治療することになります。
おおよそ1~2ヶ月の治療で大多数の患者の方は治癒します。

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医療費はどのくらいかかる?(HU)


HUに限らずぶどう膜炎は保険適応で、保険診療の範囲で必要な検査と治療ができます。
医療費は通常の眼の病気と同じくらいです。

スクリーニング検査とは?


HTLV-1に感染しているかどうかを調べるための、抗体を用いた検査のことをいいます。
血液を採取して調べます。

HTLV-1は人に感染する時にHTLV-1しかもっていない物質を産生します。
それらは人の体にとっては異物なので、免疫システムにより抗体が作られることになります。
このHTLV-1に対する抗体が体内にある人はHTLV-1に感染していると考えられます。

抗体検出には何種類か方法がありますが、最初の1種類の方法で陽性だった人に対しては、念ため違う種類の検査を行い最終的な判断をしています。

検査を受けた方がよいのはどんな時?


HTLV-1の感染は主に母子感染や性行為感染(夫婦間等)によって起こります。

特に母子感染による子供さんへの感染では将来病気を発症する危険が少し高くなりますが、感染の分かっているお母さんから子供さんへの感染を最小限に防ぐ方法はすでに確立していますので、母親になる予定の方は検査を受けることが望ましいと考えます。

また近親者(特に親や配偶者)の感染が確認された場合には、ご自身の感染についても確認されたほうがよいかもしれません。
万が一なんらかの症状が出た場合、原因の特定が短時間で済み、素早く治療に取り掛かれる可能性があります。

どこで検査してもらえる?


スクリーニング検査は一般の医療機関で受け付けてもらえます。

ご自身にHTLV-1に感染しているかもしれないという自覚(近親者が感染しているなど)があり、なんらかの自覚症状(だるい、疲れやすいなど)があって医師が必要と判断した場合は保険診療の扱いで検査することができます。

それ以外は自費診療扱いでの検査になります。

献血で調べてもらえる?


輸血によるHTLV-1の感染を防ぐため、献血された血液はすべてHTLV-1のスクリーニング検査にかけられます。
また陽性だった場合、希望者には本人にその結果が通知されます。

しかしながら献血という行為は、その血液を待っている人達のためになされるべきものですので、検査だけを目的に献血をすることはお避けください。

昔に献血した時は何も言われなかったのに、今回は感染の通知が来ました


いくつかの理由が考えられます。

1)「以前」というのが1999年より前(献血でのHTLV-1感染告知開始前)だった。
2)「以前」献血した時に、問診票の「感染の告知を希望する」にしるしを付けていなかった。
3)性行為感染などで「以前」と「今回」の間で新たに感染した。

日常生活ではほとんど感染しないってホント?


本当です。

HTLV-1は、ウイルスに感染した細胞が生きたまま、細胞ごと体内に入らない限り感染することはありません。

日常生活においてこのような条件を満たす行為は、授乳や性行為および輸血などの医療行為位しかありません。
したがって、それ以外の一般的な日常生活では、ほぼ感染しないと言えます。

つまりHTLV-1は、咳やくしゃみを介して感染することができるインフルエンザなどのウイルスに比べて格段に感染しにくいウイルスなのです。

洗濯やお風呂、食器などは大丈夫?


大丈夫です。

HTLV-1に感染しているお母さんの子供でも、出産時・母乳授乳によりHTLV-1に感染しなかった子供は、それ以降感染者のお母さんと一緒に暮らしていてもHTLV-1に感染することはほとんどありません。

つまり、洗濯やお風呂、食事などの一般的な生活で感染することまずないと考えてよいと思います。

カミソリ、ハブラシは共用しても大丈夫?


ほぼ心配いりませんが、避けた方が安全です。

カミソリやハブラシなどは、使い方によって血液などが付着することがあります。
それを他の人が使用することで生きた感染細胞が体内に入る可能性は否定出来ませんが、洗ってあれば危険は低いと考えられます。

生きた細胞というのは大変弱いもので、水道水で洗っただけでも容易に死んでしまいますので、HTLV-1の感染はまず起こらないとものと考えます。

ただ、これは血液などを介して人から人へ感染する病気全体に当てはまるものではなく、水洗いだけでは感染を防げないものも有ると考えられます。
また洗いが不十分だった場合は感染の危険があるとも言えます。

したがって、感染症一般に対する心構えとして、このような器具の共用は避けたほうが安全だと言えます。

母子感染とは?


HTLV-1に感染したお母さんから生まれた子供さんへの感染をいいます。

そのほとんどが母乳を与えることによって引き起こされると考えられています。
ただし、母乳を与えていても約80 %の子供さんは感染しないようです。

また母乳をやめて人工乳で育てると97 %の子供さんが感染せずに成長することができると言われています。

更に母乳に手を加える(一度凍結させたり、熱を加える)ことで感染を防ぐ方法も知られていますが、一般家庭でこれを忠実に実行するにはかなりの労力がいるようです。

HTLV-1に感染したお母さんが母乳による育児を希望される場合は、HTLV-1に詳しい医師にご相談されることをお勧めします。

母乳さえあげなければ絶対に感染しない?


いいえ。

感染者のお母さんが母乳をあげることをやめて人工乳で育てていても約3 %の子供さんがHTLV-1に感染すると言われています。
これは出産時の出血などによるものではないかと考えられています。

このことを怖れて帝王切開を望まれる方もいるようですが、手術にも出血は伴いますし手術自体のリスクもありますので、一概にこの方法を勧めることはできません。

子供を作らないほうがいい?


HTLV-1における母子感染の起こる確率は決して高いものではありません。

母乳をやめて人工乳で育てれば97 %の子供さんは感染することはありません。
また例えHTLV-1に感染したとしても、その大多数は感染していない人と同じように健康な人生を送ることができます。

ですので「子供は作らないほうがいい」などと言う事は決してないと思います。

しかしながら物事に対する受け止め方は人それぞれです。
またご本人が希望されても周囲の無理解に苦しめられることもあるかもしれません。

そんな時は是非一度、HTLV-1に詳しい医師に相談をしてみてください。

子供の感染を調べるには?


生後半年間くらいはお母さんからの移行抗体がお子さんの体内に残っており、HTLV-1に感染していなかったとしてもスクリーニング検査で陽性になることがあります。

HTLV-1感染の有無を正確に判定するためには余裕をみて3才を過ぎてから検査を受ける方が良いと言われています。

性行為感染とは?


性行為による感染を言います。

特に長期間に渡って同じ人との交渉が続く夫婦間での感染が多いようです。

夫が感染者の場合、結婚後数年以内に20~25 %の妻が感染すると言われています。
それに比べると、妻が感染者だった場合の夫へ感染はかなり少ないようです。
これはHTLV-1感染細胞が精液中に多く存在するためと考えられています。

感染が判明したら性行為は避けた方がいい?


HTLV-1感染によって病気になる確率はもともとあまり高くはありません。

一番発症率の高いATL(成人T細胞性白血病)でも全体の5 %程度です。
しかも成人してから感染した人で、ATLを発症した人はこれまで確認されていません。

HAM(HTLV-1関連脊髄症)やHU(HTLV-1関連ぶどう膜炎)は成人してからの感染でも発症が確認されていますが、発症率自体がATLの数分の一程度と低く、またHAMに関しては性行為によるHTLV-1感染が原因で発症した人はほとんどいないのではないかと考えられています。

したがって、あまり過剰反応を起こす必要はありません。
パートナーと、場合によってはHTLV-1に詳しい医師を交えてよく話し合ってその時々の人生設計を楽しんでください。

どうしても気になる場合はコンドームの使用でほぼ感染を防御できます。

輸血感染とは?


HTLV-1に感染した人の血液を輸血することによって起こる感染を言います。

血液中のたくさんの生きた感染細胞が一度に体内に入るため、その感染率は50 %以上と感染力の弱いHTLV-1ではかなり高めです。

また輸血ほどではないですが、注射器の使い回しや入れ墨などでも血液中の生きた感染細胞が体内に入る可能性があり感染の危険性があります。

日本で輸血したけど大丈夫?


現在日本国内では日本赤十字による献血や各病院における院内供血(病院内で輸血用血液を集めること)の際にはかならずHTLV-1の抗体検査がなされ、感染が確認された血液は輸血には使用されません。

したがって、国内においては心配する必要はありません。

海外で輸血したけど大丈夫?


北米・西ヨーロッパ各国では日本と同じようにHTLV-1の抗体検査がなされています。

それ以外の地域では検査されていない地域が多いようです。
その中でもHTLV-1感染者が比較的多い地域はカリブ海・南米などがあげられます。
それ以外の地域は例え検査がされていなくても感染血に当たる確率は1 %よりかなり少ないと思われます。

しかし注射の回し打ちを頻繁に行っている麻薬常習者が多い地域や買血が盛んな地域などは、HTLV-1を含めてあらゆるリスクが高くなっている可能性があります。

感染予防のワクチンはないの?


現在はありません。

またHTLV-1の感染を防止するワクチンの開発はあまり行われていません。

これは感染者の数があまり多くなく、また病気の発症率もそれほど高くなく、感染経路がほぼ特定されており防御法が確立しているなどの理由で、社会的・経済的需要が大きくないためと思われます。